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"純粋さ"と"愛着"が原点。

更新日:5月6日


「どうして書家になったんですか?」


初対面の方からは、ほぼ100%尋ねられます。笑


「子どもの時からずっと、文字を書くことが好きだったからです!」


いつもこう答えます。



でも、時に「なぜ自分は文字を書くことが好きになったのだろう?」と思うのです。


気付いたら、好きだった。


ここに明確な理由はいらないのかもしれませんが


その「好き!」のヒントは、もしかしたら


書家としてお仕事させていただく中で出会った


子どもたちと過ごす時間にあるのではないかとふと思いました。



子どもたちと一緒に書をしていると、その度にたくさんの発見があります。


今回は、子どもたちとのエピソードも交えて、書への想いを綴ります。 






書きたい字を、書きたいように。

ある日、とあるご兄弟のお兄さんに書を教えていたら、


当時小学2年生だった弟の I くんも「書いてみたい!」と声をかけてくれました。


その前向きな想いが嬉しくて、何を書くのかただ見守っていると、



「最近習った漢字なんだー!」


「キーホルダーにしてお父さんとお母さんに贈りたい!」   



と、あっという間に素敵な作品たちが出来上がっていき、


その様子にご両親も、そして僕も、ついつい感動して見惚れてました。



子どもならではの表現力。


おそらく、大人にはこの純粋な表現はできない。



しかしながら、I くんはあまり納得いかない様子。


理由を聞いてみると「もっとかっこよく書きたかった」とのこと。なんてストイック。 



「こうなりたい!」「こういう字が書きたい!」



という気持ちが嬉しいですよね。応援したくなる。



後日、また書をやってみようという機会があり


せっかくなので前回の作品たちの続きのようなイメージで


そして、小学3年生の書写の授業も見据えて


「筆でかっこいい線を書くための直線の書き方」から教えることに。


だんだんとしっかりとした線が書けるように・・・!



こういった基礎・基本って「やらせる・やらされる」になりがちですよね。


「やりたい!」から後押しできると


始めのなかなかうまくいかないところも、楽しみながら取り組めます。



前回の続きということもあり「かっこいい字を書きたい!」という


ストイックなスイッチが入るととにかく吸収が早い I くんは


少し後押ししただけでみるみる成長。



線の書き方をある程度理解したところで、


最後に鍛えた直線で「王」と書いてもらいました!


真剣な良い表情。立派な直線が書けました◎





これからも「書きたい!」という純粋な想いを持ち続けてほしいですし


引き続きその後押しをしていきたいですね!




家族みんなで、初の書体験・・・!

2024年1月に東京・押上のカフェ「HaydEn」様にて開催した個展「流轉」。



カフェの広々とした店内の空間も活かして、書作品の展示のほかに


気軽に書を体験できる「水書き」ブースも用意しており


特にお子様連れのお客様にご好評いただいておりました。



中でも特に印象的だったのが、当時2歳の娘さんをお連れいただいたご夫婦。


展示もご覧いただいた後、せっかくなのでみんなで書を体験してみることに!



娘さんにとっては、大きな筆で床に書くなど初めて見る光景ばかり。


緊張してしまったのか、最初は泣いちゃいました。


そこで、娘さんが大好きだと言う「アンパンマン」を描いてみせてみると、泣き止んで、少し興味を持ってくれたみたい…!

  



それでもまだ緊張は解けず、まずはお父さんに、娘さんのお名前を書いていただきました!



お父さん、なかなかお上手◎ 


その後、お名前の由来など、娘さんについてゆっくりお話を伺っていたら、


さっきまで緊張していたはずの娘さんが筆を手に取り、


おもむろに書いてくれました…!!



初めての書道体験の瞬間


それは、ふと緊張が解かれ、言葉にならなくても

「やってみたい!」と身体が自然と動いた瞬間。



この素朴な興味や好奇心を引き出し、


その人らしい "表現" や "好き!"のきっかけをつくるお手伝いをしていきたい。




「書いてもいいんだ!」「書くって楽しい!」って


ほんの少しでも思ってくれていたら、あるいは


思い出してくれる瞬間があれば、嬉しいな。




「楽しい!」と思うことが、自分の書の原動力。

子どもたちと一緒に書をしていると、


そのパワフルな表現力成長の早さにはいつも驚かされます。



「好き!」「やりたい!」という純粋な想いが、


表情からも感じられることがとにかく嬉しいですし、後押ししたいと思うのです。



振り返れば僕の幼少期は、みんなが外で遊ぶ中、なぜか部屋の隅っこでひとり


ひたすら漢字を書いていたというちょっと不思議な子でした。



きっと周りの大人は多少心配していたと思いますが(笑)


先生も親も「男の子は外で元気に遊ぶべき」ということは言わずに


ただ見守り、時に褒めて伸ばしてくれたことが


書いてていいんだ!という安心感


書くのが好き!自分の字が好き!という純粋な想いに繋がり、


それが、いまの自分をつくっているのだと思います。




書においても、基礎・基本はもちろん重要ですが、まずは純粋に


「書って楽しい!」


と気軽に思えることが大事だと僕は思います。



書といっても色んな楽しさがあって、それは「書く」だけではなく、


「見る」「感じる」「(道具や言葉の意味、歴史を)知る」など、


楽しみ方は人それぞれ。



子どもと一緒に書をするたび、自分の原点である


「愛着を持って純粋に、書を楽しむ」


ことを思い出させてくれます。



書家となってからは、書くということはもちろん、


「墨で心を表現する」ことの楽しさに目覚め、ひとりでも多くの方に


想いが伝わるような作品を創りたいと思っています。




 
 
 

書家 市川 雄大 Yuta Ichikawa

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